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| 2000年12月18日発行 No.306-311 |
ポイント整理と影響予測
連立与党は12月14日、前日発表の自民党大綱をほぼ踏襲した形で相続税の小規模宅地等の特例の適用対象面積の拡大、贈与税の基礎控除額の引上げなどを柱とした平成13年度の税制改正大綱を発表しました。改正の内容としては企業組織再編税制やグリーン化税制など、経済・社会情勢の要請に応じた新税制が盛り込まれてはいるものの、全体として小幅な手直しに留まったもの、と言うことが出来ます。ここでは、これらの改正案のポイントを整理すると共に、来年3月に可決されるものと見込まれる新税制の影響について各税目分野ごとに検証してみたいと思います。
| 1.相続税 | 小規模宅地等の特例の適用対象面積の拡大 (1)特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等 330m2→400m2 (2)特定居住用宅地等 200m2→240m2 |
| 2.贈与税 | 贈与税の基礎控除額の引き上げ 60万円→110万円 |
| 3.法人税 | 一定の要件を満たす会社分割・合併等にかかわる資産の譲渡損益を繰延べる等の企業組織再編税制の整備を行う。 |
| 4.所得税 | 平成13年6月末に期限切れとなる現行の住宅ローン減税について、適用対象期間を15年から10年に短縮し、更に、3段階であった控除率を一律1%とする新制度により平成15年12月31日まで延長する。 |
| 5.源泉所得税 | 株式等譲渡益課税の源泉分離課税方式の廃止(現行平成13年1月31日まで)を平成15年3月31日に延期する。(平成15年4月1日より申告分離課税に一本化) |
| 6.グリーン化税制 | 自動車税について環境負荷の小さい自動車につき性能に応じて税率を軽減し、反対に環境負荷の大きい自動車につき新車登録から一定の経過年数に応じた重課をする「自動車税のグリーン化」を中心としたグリーン化税制を導入する。 |
| 7.税理士制度 | 規制緩和の要請も踏まえ、税理士法人制度や税務訴訟において税理士が補佐人となる制度の創設、税理士試験制度の見直し等所要の措置を講ずる。(与党大綱では、付記されていた細目が削除された) |
| 項目 | 改正案の内容 | 適用時期 | |||||||||
| 小規模宅地等の 課税価格の特例 (相続税)
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特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、国営(特定郵便局)事業用宅地等に係る特例の適用対象面積を現行の330m2から400m2に、特定居住用宅地等については、現行の200m2から240m2に拡大する。 | 平成13年1月1日以後 相続開始分より |
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| 贈与税の 基礎控除額 |
贈与税の基礎控除額を現行の60万円から110万円に引き上げる。 | 平成13年1月1日以後 贈与分より |
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| 住宅取得資金 贈与の特例 (贈与税)
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(1)<非課税限度額> 現行の300万円の基礎控除額を550万円に引き上げる (2)<適用対象者及び要件の拡大> 現行の一次取得者に加え買い替えや増改築工事(工事費1,000万円以上)についても適用対象とする。 |
平成13年1月1日以後 贈与分より |
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| 居住用財産の 買換え等の特例 (所得税)
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下記の措置を講じたうえ、その適用期限を平成15年12月31日まで延長とする。
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平成13年4月1日以後 に行う譲渡分より |
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| 特定の事業用資産 の買換え等の特例 (所得税)
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既成市街地等内から外への買換え(1号買換)の譲渡資産の要件について、現行の平成3年3月31日以前取得のものから、所有期間10年超のものに改め、一定の買換えを適用対象から除外した上、適用期限等を延長(最高5年)する。 | (大綱に記載なし) | |||||||||
| 国等に対して 財産の寄附を した場合の譲渡 所得の非課税 (所得税)
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公共法人のうち独立行政法人に対する財産の寄附等(贈与又は遺贈)について、譲渡所得の非課税の適用を受けるための国税庁長官の承認要件のうち、(1)公益増進寄与要件と(2)所得税等の不当減少がない旨の要件を不要とし、2年以内の事業供用要件のみとする。 | 平成13年4月1日以後 の財産の寄附等 |
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| NPO税制 (相続税)
(所得税・法人税) |
相続又は遺贈により財産を取得した者が一定の認定NPO法人に対して相続財産等の寄附をした場合には、課税の不当減少が生ずる場合を除き、これを非課税財産とする。 ※所得税及び法人税についても同上の認定NPOに対する寄附による一定額の所得控除及び損金算入を認める。 |
平成13年10月1日の 寄附等より |
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| 農地等の納税猶予 の特例制度 (相続税)
(贈与税) |
農地等に係る相続税及び贈与税の納税猶予の特例について一定の公共事業用に一時転用の場合の継続適用を認める。 | 平成13年4月1日以後 の一時転用より |
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| 上場株式等の譲渡 に係る源泉分離 選択制度 (源泉所得税)
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平成13年3月31日までで廃止される予定であった譲渡価額の1.05%の所得税の源泉徴収によって課税関係を完結させる源泉分離選択課税制度を平成15年3月31日まで存続させる。 | 平成13年4月1日より 平成15年3月31日まで |
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| 商品先物取引に 対する申告分離 課税制度 (所得・住民税)
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一定の商品先物取引による所得について、これまでの雑所得としての総合課税制度の適用に代えて、所得税20%、住民税6%による申告分離課税とする制度を平成15年3月末までの2年間に限定して創設。 | 平成13年4月1日から 平成15年3月31日まで の先物取引 |
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| 共有物分割の場合 の非課税措置 (不動産取得税)
(特別土地保有税) |
共有物分割による不動産の取得に係る不動産取得税及び特別土地保有税について、一定の要件の下に非課税措置を講ずる。 | (大綱に記載なし) |
2年連続で見送られた相続税の税率構造の見直しに代えて、急拠浮上し大綱に盛り込まれたのが、小規模宅地等の特例の適用対象面積の拡大に関する項目であり、今回は(平成11年改正のような特定事業用関連のみの改正ではなく)特定居住用部分も含まれたため、事実上<特定>要件を満たさない不動産貸付用地等(現行200m2まで)しかないケースを除いて、ほとんど全ての納税義務者に減税の恩恵が行きわたります。
住宅取得資金贈与の特例の拡充は、これまでの1次取得者への限定適用を改めた点が目新らしく、贈与税の基礎控除額の引上げと合わせて、今改正の特徴点と言うことが出来ます。
又、譲渡関連では、基本的に適用期限の延長のみ(長期譲渡所得の一律26%税率、居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度など)のものが多く、余り大勢に影響が無いような改正点が中心となっています。特に今回、予想を大きく裏切られたのが、優良宅地等の譲渡税率(現行4千万円以下20%、4千万円超26%)に関して、一律20%税率への引下げが行われず、単純に平成15年末までの期限延長で決着してしまった点であり、一般の長期譲渡と比較して優良宅地譲渡のメリットがほとんどない(最大で240万円)状態が来年からさらに3年間継続することになります。
今回の改正が原案どおり可決されると、相続税の小規模宅地等の特例の適用対象限度面積は、200m2、240m2、400m2の3つが併存することになります。特定事業用関連即ち事業承継を伴う相続がより保護されていることには変わりがありませんが、本当に事業承継を保護したいなら、むしろ未上場株式の評価及び課税方法を抜本的に見直すべきであり、その意味において我が国の事業承継税制は未だいびつなままと言えます。又相続対策としての不動産投資は、結果的に控除割合(80%に対して50%)と限度面積(240m2、400m2に対して200m2)の両面で明確に<特定>用より不利となったため、今後は特定居住用を絡めた賃貸併用住宅の建築を検討するなど、資金収支面も含めてあらゆる角度から対策方法を考えていく必要があります。
贈与税の基礎控除額の引き上げは、相続税と贈与税の損益分岐点を変えるものですが、相続税の税率や課税ベース拡大の改正も近く行われる気配があることから、そうした改正を見届けた上で、生前贈与などの対策の有効性を検討すべきであると思います。
| 項目 | 改正案の内容 | 適用時期 |
| 企業組織再編税制 (法人税)
(登録免許税) (不動産取得税) |
適格組織再編成に該当する合併、分割等により企業が資産を新会社に移転する際に形式的に発生する譲渡損益や、旧会社の株主に新会社の株式を交付する際に生ずる株式の譲渡損益について、一定要件の下に課税を繰延べる。 ※会社分割に伴う商業・不動産登記により発生する登録免許税、不動産取得税等の負担も同様に一定要件の下に軽減し、又は非課税とする。 |
平成13年4月1日以後 に行われる組織再編 成より |
| 減価償却関連 (法人税)
(所得税) |
(1)<中小企業関連> 「中小企業投資促進税制」(青色申告者である中小企業者等が取得した一定の対象設備について取得価額の7%の税額控除又は30%の特別償却を認めるもの)について継続実施する。 ※上記の他「中小企業技術基盤強化税制及び中小企業者などの機械等の特別償却制度についても適用期限を延長する。 |
平成14年3月31日まで (※は平成15年3月 31日まで)に開始する 事業年度 |
| (2)<IT関連> パソコン減税を平成13年3月末で廃止し、電子計算機の耐用年数を現行の6年から、パソコンについては4年に、その他の電子計算機については5年に短縮する。 |
(大綱に記載なし) | |
| 土地重課制度 (法人税)
(法人住民税) |
平成12年末までの期限付きで適用停止とされていた法人の土地譲渡益に対する追加課税制度(現存するのは一般と短期のみ)について、不適用期間を平成15年12月31日まで3年間延長する。 | 平成13年1月1日より 平成15年12月31日まで の土地等の譲渡 |
| 連結納税制度 | グループ企業の損益を通算して法人税を課税する制度を平成14年に導入することを明記 | 平成14年に導入を 目指す |
| 項目 | 改正案の内容 | 適用時期 | |||||||||||||||||||||||||||
| 改組 新住宅ローン 減税制度 (所得税)
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(1)<控除期間・控除率の圧縮>
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平成13年7月1日から 平成15年12月31日ま での居住開始分 |
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| 高齢者世帯向け 賃貸住宅への政策 減税 (所得税)
(固定資産税) |
一定の高齢者世帯向け賃貸住宅について、5年間にわたり、耐用年数に応じて40%(35年未満)又は55%(35年以上)の割増償却を認め、又、最初の5年間固定資産税を3分の1とする措置を3年間に限定して講ずる。 | (大綱に記載なし) | |||||||||||||||||||||||||||
今大綱の法人税関連の目玉は企業組織再編税制の整備に関する項目です。内容も適格とされる分割・合併・現物出資の定義から始まり、株主の課税の問題、各種引当金の引継ぎ等の問題、租税特別措置法上の特例の適用関係の問題など、多岐にわたっており、実に26枚にもわたる<付記>事項が大綱に添えられています。これは、専ら政府与党の経済政策の一環として行われるものであり、換言すれば、いかに税制が経済を後押しする効果を期待されているか、の証左と言えます。ただし、組織再編がすぐに企業利益の増加を意味するわけではないので、政府が期待するような景気浮上効果が直ちに出て来るかどうかについては疑問の余地があります。
又、所得税関連の目玉は、新住宅ローン減税制度の導入ですが、内容的には平成13年6月までの新税制(控除期間15年)と同年7月以降に適用される予定であった旧税制(同6年)との中間的な規模の減税項目となっています。これにより、住宅需要の停滞をある程度食い止めることはできるかもしれませんが、減税規模が中途半端なものであるため、需要そのものを大きく喚起することは難しいように思われます。
[文責:田川 嘉朗]