
遺言と遺留分と分割協議
遺言に「すべての財産は長男に」と記されておりました。遺言執行人もおります。そこで問題になるのが遺留分です。遺言でも侵せない部分を遺留分といいます。通常法定相続分の半分です。この遺留分をご長男以外の相続人が主張するかどうかです。
相続のお手伝いをしていますと、遺言の存在をどの場面で明示したほうがいいかどうかのご相談がよくあります。ケースバイケースであることは間違いありませんが、幾つかの事例をご紹介していきましょう。
明らかにトラブルが起きそうなときは、出来るだけ早い機会に遺言の存在を明示します。明示しない理由が見当たりません。では明らかにトラブルが起きそうなときとはどういうときでしょうか?
1.兄弟姉妹が弁護士を伴って会いたいと言っている
2.本家の子供の配偶者もしくは長男を養子にするときに反対した人がいた
3.遺言を書き換えており前の遺言と大きな相違がある場合
4.今までも兄弟姉妹で大きないさかいがある場合
等です。この場合は、遺言を見て、遺留分減殺請求が高い確率で予想されます。
もめるかもめないかが明らかで無い場合、まずは話し合いから入ります。遺言は確かに存在しますが、全員の話し合いが整う場合には、遺産分割という道もあります。その際には、遺言の存在は言いますが、内容までは明示せず、話し合いの解決が出来るかどうかを探ります。他の相続人の意向も聞き、意見の相違の部分だけ遺言の意向を斟酌すると言う方法もあります。
NO.731〜733 2006.05.14〜16
遺産分割時の簡易時価情報その4
相続税の評価は公示価格の 8割と言われています。固定資産税評価額は公示価格(今回は幾分の時点修正後)の7割と言われています。地価マップで道路にそれぞれ値段が付いていますので比較してみては如何でしょうか?そして固定資産税の評価が高いと思ったときは東京都にお問い合わせください。間違った価格が付いてないとも限りません。
( 2006年4月22日の読売新聞に次のような記事が載っていました。)
「町田市は21日、都市計画道路3線の予定地となっている土地の所有者183人から、1996年度以降に固定資産税・都市計画税計2762万4565円を過徴収していたと明らかにした。都市計画道路予定地は地価が下がるとされ、資産税の減額対象になるが、この減額補正の適用漏れとなっていた。市資産税課によると、減額適用されていなかったのは、国道16号立体化事業予定地など都市計画道路3線の約3万2964平方メートル。今年2月に土地所有者の1人から問い合わせがあり、市内すべての都市計画道路予定地に対する減額補正状況を調べて判明した。1人あたり最大で314万8000円、最少で293円の減額が漏れていた。同課は「都市計画決定の情報を集める努力が不足していた」とし、減額漏れについては、納税者を訪れて還付・返還の説明をするという。還付・返還は、過去5年分については地方税法に基づいて行われ、それ以前については市独自の返還金支払い要綱に基づいて行われる。市要綱は返還範囲を過去20年としているが、市税務情報は「過去10年分」までしか保存されておらず、それ以前の減額漏れの実態は不明だという。都市計画道路予定地の減額制度は1976年度から実施されている。減額漏れが起きていた都市計画道路3線のうち、2線は1989年以降に都市計画決定されているが、残り1線は1965年に計画決定されていた。」
NO.717 2006.04.30
遺産分割時の簡易時価情報その3
なぜ遺産分割時には簡易時価が必要なのでしょうか?私達相続税の専門家は相続税の評価である路線価は既に計算しています。税法は租税の安定性を鑑み、時価の 8割の値段を路線価としてつけています。となると評価額を0.8で割るという作業が必要になります。さらに土地は売りにくい、売りやすい、収益を稼ぐ、稼がない、値上がり傾向、値下がり傾向があります。すべてのものを考慮した情報での遺産分割はありえません。そうは言っても全く無視するわけには行きませんので簡易時価情報が欲しくなるときがあるのです。
NO.716 2006.04.29
遺産分割時の簡易時価情報その2
全国地価マップという便利なサイトがあります。財団法人資産評価システムセンターさんが運営しています。 このサイトには次のような記載があります。
「財団法人資産評価システム研究センター(以下「評価センター」という。)が提供しています。国や地方公共団体が一般に公開している宅地の価格に関し、評価センターにおいて収集した情報を公開しております。 価格など掲載されているデータの内容に関するご質問は、それぞれ下記にお問い合わせいただくか、または、それぞれのホームページをご覧ください。
1.固定資産税の路線価等は、各市町村 (ただし、東京都 23区内は東京都)
2.相続税の路線価等は、 国税庁
3.地価公示価格は、 国土交通省
4.地価調査価格は、各都道府県
固定資産税の路線価、相続税の路線価、時価公示が同時に見ることが出来て便利です。簡易時価を計算するときは情報が多いほど嬉しいものです。不動産鑑定士さんに評価してもらうほどの正確性は要しないが、情報は欲しい場合に便利です。
NO.715 2006.04.28
遺産分割時の簡易時価情報その1
国土交通省では、不動産市場の透明化、取引の円滑化・活性化等を図るため、 2006年(平成18年)4月27日(本日)より
国土交通省ホームページ内「 土地総合情報システム 」
において、土地取引価格情報の提供を開始しました。
ホームページには次のような解説があります。「提供する土地取引価格情報は、法務省より土地取引に係る登記情報の提供を受け、地価公示制度の枠組みを活用して、取引当事者(買主)に対して取引価格等に関するアンケート調査を実施し、調査によって得られた情報を、個別の物件が容易に特定できないよう配慮した上で公表するものです。土地取引価格情報の内容 は土地の種類別(住宅地、商業地、工業地)、取引の内容別(更地、建付地 (上物付き)、マンション等)に取引価格等が概観できる情報を四半期毎に、 四半期単位でとりまとめた上で公表しています。今回は、平成 17年第3四半期(平成17年7月から9月)及び第4四半期(平成17年10月から12月)に取引されたものを提供します。提供する情報の総件数は、17,609件です。 」
さて早速拝見しました。平方メートルあたりの単価が便利です。簡易時価を計算するときに路線価 ÷0.8を使いますが、事例を見たい気持ちは専門家としてありました。ありがたい情報です。
NO.714 2006.04.27
相続税申告書評価と遺産分割協議書と時価
遺産分割協議書は正式な書類です。相続人全員で遺産の分け方、債務の引継ぎの協議を終え、全員が実印を押した書類です。それが相続税申告書に添付されています。じっくり見られたお客様からのご質問が多いのも事実です。
土地は、相続税の申告書では相続税の評価で計算されています。路線価です。時価の8割と言われています。実際の分割協議では簡易時価が利用されることもあります。理由は評価額と時価が離れている物件も良くあるからです。ところが遺産分割協議書では面積が記されておりますが、時価は記載されていません。
預金は相続税の申告書では元利合計で計算されています。元金と利息の合計です。実際の分割協議では元本で計算されることが多いようです。ところがいざ解約してみますと、定額貯金のように利息が多くつくのもあります。利息の多い定額貯金と利息の少ない定期預金では損得が生じます。もし厳密にするならば、遺産分割は利息込みの時価でするのかも知れません。
上場株式の相続税の評価は相続が開始された日の最終価格と以前3ヶ月の月平均の最終価格の最も低い価額になります。遺産分割をする時点の価格は厳密には違っています。その日の最新価格と言う時価があるわけです。遺産分割協議書では通常、株数しか書きません。厳密に言えば話し合いの時の時価も参考にすることになります。
以上土地、預金、上場株式と見て来ました。相続税の評価に使った価額と時価とは近い物ではありますが、厳密に言えば違っています。遺産分割協議のときは、時価でするのが本来の原則ですが、厳密にやるときりがありませんので、相続税の評価を参考に決めることが実務では主流であります。
ところが後でじっくり遺産分割協議書を見ると、疑問が湧いてきます。それは厳密な時価とは少し違うからです。分割協議するときに多少の違いはあるかもしれないと事前に全員で承知しておくのも一つのやり方です。更に最終的に相続人間で話し合い、負担を調整するのも一つのやり方です。ただし税務上贈与税がかからないような配慮も大切です。
NO.674〜677 2006.03.18〜21
相続人に未成年の方がいた場合の遺産分割
相続発生時に相続人たる子供が未成年の場合どうなるでしょうか?
親権者(この場合残された母親)はこの財産を管理し、又、その財産の法律行為について子を代表する(民法824条)とあり、親は財産管理と代理が出来ることになっています。相続の遺産分割協議においてもこれが原則です。ところが母も相続人、未成年の子供も相続人となります。そうなると利益相反関係となります。(民法826条1項)つまり同一の相続財産を巡って利害が一致しない関係と言うことです。この場合母親は代理することは出来ません。
母と未成年者の子供が利益相反関係となりますと母親は代理することは出来ません。そこで特別代理人の選任が必要となります。通常親権者が家庭裁判所に請求し、家庭裁判所が選任します。実際は『特別代理人選任申立書』に候補者を書くことが出来、親権者の息のかかった人物が選ばれることはしばしばです。この手続きに時間がかかることを想定して遺産分割協議の準備をします。
手続きは次の通りです。
1.申立人は親権者,後見人,利害関係人
2.申立先子(被後見人)の住所地の家庭裁判所
3.申立てに必要な費用は子(被後見人)1人につき収入印紙800円,連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)
4.申立てに必要な書類
ア 申立書1通
イ 申立人(親権者),子の戸籍謄本各1通
ウ 特別代理人候補者の戸籍謄本,住民票各1通
エ 利益相反行為に関する書面:遺産分割協議書の案
※ 事案によっては,このほかの資料の提出をお願いすることがあります。
用紙の見本はこちらにあります。
NO.657〜659 2006.03.01〜3
代襲相続人のよもやま話
相続開始前に相続人が死亡している場合、その者の子等が代って相続します。これを「代襲相続」といいます。代襲相続は、相続人が子等直系卑属または兄弟姉妹の場合に認められます。長男さん、次男さん、長女さんが相続人です。ところが長男さんが亡くなっていました。長男さんの子供が2人います。法定相続人は長男さんの子供2人と次男さんと長女さんになります。法定相続分は長男さんの子供2人がそれぞれ6分の1、次男さんと長女さんがそれぞれ3分の1です。
叔父さん叔母さんと遺産分割協議をすすめる代襲相続人の心境はどうでしょうか?良い点は兄弟姉妹より感情的にならない点です。分割協議のもめごとは、兄弟姉妹間で、ご両親からの愛情の奪い合いや不公平感の累積から生じる時が良くあります。叔父さん叔母さんだとそこは少し緩やかになる可能性が高いようです。
一方厳しい点は、世代が違う叔父さんや叔母さんと話し合うこと自体ハンディがありそうです。自分の小さいころを知っている人との話し合いになります。
「兄弟姉妹の関係のみと代襲相続人が入った場合、どちらの話し合いがスムーズですか?」というご質問を受けました。もちろんケースバイケースです。ただ敢えて言えば、代襲相続人が入ってきたときのほうがもめる率は高いようです。話し合いの基盤が異なってくるからです。同じ生活をしていた家族は似ているところがあります。ところが代襲相続人とは同じ生活をしていないので、権利の主張が少し多くなるような気がします。
NO.561〜563 2005.11.25〜27
遺産分割協議がまとまらないと不利な点
相続税の申告期限は相続の開始の翌日から10ヶ月以内です。一方、遺産分割は、法律上いつまでに行わなければいけないという期限はありません。ですから、相続人同士で納得がいかなければ、いつまでも話し合いを続けることはできます。しかし、この申告期限内に遺産分割がまとまらないと、その後もまとまらない可能性はとても高いのが現実です。できれば、申告期限内に分割を確定したいところです。
まとまらないとどうなるでしょうか?
相続財産は共有のままです。残念ながら次のような不都合が生じてきます。全員の一致が無いと売却・物納が出来ません。土地の有効利用が出来ません。建物の建替えが出来ません。遺産分割でもめていますと、処分だけは一致してということも考えにくいです。その結果手をつけられない状況が続きます。相続人全員に不利なことばかりです。
税金的にも不利が生じます。
未分割財産については、
(1)配偶者に対する相続税額の軽減
(2)小規模宅地の評価減
(3)特定事業用資産の特例
が受けられません。申告期限から3年以内に分割が確定すれば、遡って適用が受けられますが、一度もめますと3年という期間は無力な場合が多いようです。
専門家としては、遺産分割はなんとしても相続税の申告期限間までに決着されることを祈ります。
NO.552〜554 2005.11.16〜18
公認会計士・税理士 天野隆の相続税・相続あなたの疑問にお答えします。トップページへ